改まった文章に使いたいフォント「有澤楷書」は上品な書体で好印象!

パソコンで使える日本語フォントの種類は、有料無料を含めるとかなりの数にのぼります。最初からパソコンに入っているものだけでも、把握しきれないほどありますよね。使い分けていない、そもそもどんなフォントが入っているのかよく知らない、という方も多いのではないでしょうか。けれども、それはとてももったいないこと。書面の見易さや文書の与える印象は、フォントの違いで大きく変わります。書く文章の目的に合わせて、使い分けると良いですね。
プリインストールされていることが多いフォントでわたしがおススメするのは「有澤楷書」です。

数多くの毛筆フォントを手掛けている有澤祥南氏の開発された楷書体フォントで、流れるような筆遣いを感じる、やや細身の、上品な風合いが特徴です。日本語の美しい字形を活かしつつも読みやすさを重視した、スタンダードな手書き風のフォントなのです。
楷書体は、筆運びや止

めの線がはっきりと見える字形が特徴の書体です。文字の歴史の中では新しい部類に属しますが、それでも隋唐時代(581年から907年)に標準字形として採用された書体ですので、ざっと1千年以上の歴史があります。最古の例では三国時代(184年から280年)の墳墓から発見されたものがあり、成立自体は隋唐時代よりもさらに古いことが確認されています。

現代では、一般的に明朝体の系統と見做されることが多いようですが、楷書の歴史は、清代(1616年から1912年)に活字体として体系化された明朝体よりも古く、歴史的には別の書体とすることが正しいようです。活字として使い易いかっちりと角ばった正方形の明朝体に対し、より手書きの趣を残したものが楷書体ということができるでしょう。

その楷書体の、パソコンフォントの一般的なものが「有澤楷書」です。かっちりとしたバランスの良い書体で礼儀正しい印象を与えることのできる有澤楷書は、ビジネス文書などやや硬めの文体のものに向いています。通常フォントに比べて字幅が狭めなので、文章量の多い書面でも窮屈感がありません。

形としては整っていながらも、流れを意識した手書き風の味わいがしっかり残っており、線の強弱がはっきりしているため、印象が冷たくなり過ぎない点もポイントです。デザイン性の高いロゴ風のものやキャッチコピーのような力強さ、印象の強さを求める場合には不向きですが、温かみのある誠実な印象を与えたい、また、改まった心がけを伝えたい、手紙のようなある程度の文字量のある書面にはぜひ使ってみていただきたいフォントです。