言葉の壁を超えるフォントや書体

最近では手書きの文章はめっきり見なくなりました。手紙は手書きの方が愛があるからと未だに手書きにこだわる人も少なくはありませんが、今は年賀状もパソコンで作る時代です。余程、文字に自信があるという人を除いては、パソコンで文章を書く方が早く書けるし読みやすい、と思う人が多数なのではないでしょうか。
一方でパソコンの文字では硬い印象があって冷たく感じられることがあります。 「承知しました」も実際に対面で伝える分には声色やトーン、表情などのノンバーバルな部分でその言葉に含まれる細かいニュアンスを伝えられますが、メールで「承知しました」だけ受信したとしたら、何か不機嫌なのか、忙しいのか、といらぬ勘繰りをしてしまいそうです。

そのため、顔文字や絵文字、LINEであればスタンプなどを活用して出来る限りのニュアンスを伝えようとします。しかしながら、ビジネスメールや文書などでは顔文字や絵文字も不適切な場合があります。 その時に文字そのものにノンバーバルな情報を与えるのがフォントや書体と言われるものです。

例えばMicrosoft Wordに元々入っているHGP創英角ポップ体は飛び出すような元気なイメージがあります。強く伝えたいメッセージや見出しには最適です。しかし多用すると勢いが強すぎて読みづらくうるさい印象を受けます。

HG丸ゴシックM-PROは可愛らしいふわふわとした印象を与えます。優しく語りかけるような文章にはぴったりですが、上司に提出する企画書などに使用するには不向きですよね。そういう文書にはHGPゴシックMやHGP明朝Bなど少し硬い印象のフォントが適していると言えます。

このように、ある意味では文章の内容以上の情報をフォントや書体が伝えています。うまく使えばより考えを分かってもらうことが出来ますが不適切なフォントを使ってしまうと文章を読んでもらう以前に「TPOをわきまえない駄目な奴」のレッテルを貼られてしまうかもしれません。例え、どんなに立派な内容だとしても、です。

フォントや書体の大切さは漫画、アニメに目を向けても感じられます。 例えば進撃の巨人のロゴは硬い石の壁のような色味や模様もさることながら文字自体の角張っていて厚みを感じさせるどっしりとした書体も物語のイメージを表現しています。

これが丸みを帯びた書体だったら台無しになっていたでしょう。最近、実写映画化された鋼の錬金術師のロゴの書体は硬い印象の「鋼」の文字の書体に対して「錬金術師」の書体をややくねった書体にすることでファンタジーな世界観を表していると言えます。

勿論、受ける印象に正解はなく、人それぞれです。しかし文章自体の吟味だけでなくフォントや書体も上手に使いこなすことで、本当に伝えたいことをさらに上手に伝えたいものです。